アメリカを理解する

アメリカ全般に関する情報を更新します。

カーボンナノチューブによるリチウム金属電池の性能向上

Rice Universityの研究で、リチウムイオン電池より要領が大きく充電も速く可能であるリチウム金属電池の性能向上の実験に成功しました。

リチウム金属電池は、充放電サイクルを繰り返すとリチウム金属が析出しデンドライト状(樹枝状)に伸びることで、セパレータを貫通し短絡を起こし、発火につながるという安全性が課題になっています。そのため、デンドライトを抑制するための多くの研究がなされてきています。

今回の研究は、カーボンナノチューブの膜で負極を覆うことで、デンドライドの成長を抑制するというものです。

カーボンナノチューブの皮膜で、580回以上の充放電サイクルでデンドライドを抑制できたとのことです。

Nanotubes may give the world better batteries

phys.org

カーボンナノチューブのコーティングは容易にできる、とのことですが、そのコストが気になります。

現状のEV向けリチウムイオンバッテリーではまだガソリン車と比較しコスト面で不利なのは否めず、EVの大衆普及に向け新技術の実用化が期待されます。

 

 

トランプ大統領によるアメリカ市民権出生地主義の制限

アメリカの市民権・国籍は出生地主義(国籍取得において出生した国の国籍が付与される方式)を取っています。要するにアメリカ領地内で生まれた者は、すべてアメリカ国籍が付与されるということです。

ちなみに日本は血統主義(出生時の国籍取得について、親の国籍を継承する方式)を取っています。血統主義の場合、仮に外国人が日本国内で子どもを生んでも、その子どもには日本国籍は付与されません。

 

この度トランプが大統領令(Executive Order)により、非合法移民・期間限定ビザの移民のアメリカ内で生まれた子どもに対する市民権付与を止めることを検討しているとの発言をし、大きな注目を浴びています。

www.axios.com

 

なぜこの発言が問題になっているかというと、アメリカ合衆国憲法修正第14条で、下記のように記されているからです。

第1節、アメリカ合衆国で生まれ、あるいは帰化した者、およびその司法権に属することになった者全ては、アメリカ合衆国の市民であり、その住む州の市民である。如何なる州もアメリカ合衆国の市民の特権あるいは免除権を制限する法を作り、あるいは強制してはならない。また、如何なる州も法の適正手続き無しに個人の生命、自由あるいは財産を奪ってはならない。さらに、その司法権の範囲で個人に対する法の平等保護を否定してはならない。(ウィキペディア)

英語文面:"All persons born or naturalized in the United States, and subject to the jurisdiction thereof, are citizens of the United States and of the State wherein they reside."

”アメリカ合衆国で生まれ、あるいは帰化した者(All persons born or naturalized in the United States)”の部分は自明的です。

"およびその司法権に属することになった者(and subject to the jurisdiction there of)"という部分が、キーポイントになります。

 

トランプ政権の主張は、違法移民の元に生まれた子どもは”その司法権に属することになった者”という条件を満たさない、というものです。

 

そもそも、合衆国憲法はアメリカにおける法の原則・大枠を定めるもので、すべてのシナリオを網羅しているものではありません。連邦法・州法等が、憲法に基づきその隙間を埋めています。

例えば、アメリカ人の両親がアメリカ国外で子どもを産んだ場合、現行法ではその子どもにアメリカ国籍が付与されますが、憲法にそう明確に書かれている訳ではありません。憲法には解釈の余地が残されている訳です。

片親のみアメリカ人でアメリカ国内で生まれた子どもの場合、片親のみアメリカ人でアメリカ国外で生まれた子どもの場合など、細かくアメリカ国籍付与の権利が現行法で定められており、現行法では、両親の国籍に関わらず、アメリカ国内で生まれた者にはアメリカ国籍が付与されます。(参照:https://www.usconstitution.net/consttop_citi.html

 

問題のトランプ政権の主張の”その司法権に属することになった者”という条件ですが、これは、単純にアメリカの法律に従う者という意味ではなく、アメリカ合衆国に臣従する者という解釈になります。(外国籍でもアメリカ内ではアメリカの法律に従うのが当然のため)

この条件から外れる明確な例は、他国からの外交官がアメリカで子どもを産んだ場合です。外交官はアメリカ国内にいてもアメリカに臣従している訳ではなく、その子どもにはアメリカ国籍は付与されません。

前置きが長くなりましたが、それではトランプの標的となっている違法移民の元に生まれた子どもはアメリカに臣従していると言えるのでしょうか?

私の個人的な見解は、”子どもはどの国に臣従をするという明確な意思は持っていないため、条件を満たしているとも満たしていないとも言えない”です。そうであるならば、違法移民・期間限定移民の子どもには、暫定的にアメリカ国籍を付与し、成人時に正式に国籍を選択させる、というのが一番フェアだと思います。

もちろんその運用が現実的に可能か(※)については考慮が必要かと思いますが、トランプの一方的な解釈には断固反対です。

 

※ちなみに、日本人の子どもがアメリカ国内で生まれた場合、アメリカ的には出生地主義でアメリカ国籍付与、日本的には血統主義で日本国籍付与となり、暫定的二重国籍となります。アメリカ政府は(正式な法として認めている訳ではないが)二重国籍を実質許容していますが、日本政府は許容しておらず、日本の法律で22歳になる前に国籍選択をしなければいけないことになっています。

 

 

ウェイモが自動運転サービスの課金開始

Googleの自動運転部門Waymoがアリゾナ州での自動運転プログラムで一部の利用者に運賃を課し始めました。

Alphabet’s Waymo begins charging passengers for self-driving cars (FT)

https://www.ft.com/content/7980e98e-d8b6-11e8-a854-33d6f82e62f8

 これまでのトライアルでは、先行利用者をボランティアで募って試験運転を行ってきていましたが、アリゾナ州フェニックス近郊で今年中の正式なサービス開始を目指しており、先行利用者の中で課金方法を試験的に試し始めたようです。

エリアが限られているとはいえ、2018年中に自動運転サービスが商業展開されるとは思っていませんでした。

アメリカでJeepはなぜ人気があるのか

FCA (Fiat Chrysler Automobiles)のJeepブランドが近年アメリカで販売数・シェアを伸ばしています。

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なぜアメリカでJeepが人気なのか、キーワードは、"Rugged"(ラギッド)です。

rugged

【形】
  1. ゴツゴツした、岩だらけの、険しい、でこぼこした、でこぼこの、起伏の激しい
  2. ギザギザの
  3. 〔顔つきが〕ごつごつした、いかつい
  4. 〔性格が〕厳しい、厳格な
  5. 〔天候が〕荒れた
  6. 無骨な、下手な
  7. 頑丈な、丈夫な、しっかりした、たくましい

※英辞朗

 "いかつい”という訳がこの場合一番しっくりくるかと思います。

Jeepは、第二次世界大戦中に使用された車であり、アメリカ人にとってはまさに"おじいちゃん世代(曾おじいちゃん世代)が戦争で乗っていた男らしい車”なのです。

アメリカでは、男らしさを誇示するマッチョイズムの文化が根強く、FCAはそのJeepブランドイメージを上手く利用して販売台数を伸ばしていると言えます。

あくまで傾向としてですが、都市部はエコを意識し自動車嗜好がテスラなどEV車にシフトしてきていますが、地方では未だピックアップトラックやSUV人気が圧倒的です。

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新築住宅販売件数が大幅に減少

2018年9月の新築住宅販売件数が予想より大幅に減少しました。前年同月比-13.2%の減少です。過去3ヶ月間の数字も修正減となりました。

この指標は米国経済の先行指標として重要で、直近明らかに減速してきており、懸念材料と言えます。

www.calculatedriskblog.com

 

テスラが2018年Q3黒字化達成

Teslaが第3四半期の決算を発表し、$2.90/share(コンセンサスは19 cents/shareの赤字)の利益を達成しました。

CEO Elon Muskはこれまで2018年度中の赤字脱却を約束しており、それを達成したことになります。

Model 3は廉価版の$35,000のモデルはまだ販売せず、付加価値の高いモデルに限っており、平均販売価格は$60,000近くになっています。2018年9月には、Model 3を2万台売っており、これは驚くべき数字です。2万台というのは、トヨタカローラ($19,000程)とほぼ同様の販売台数です。

アメリカ人は富裕層が厚いんだなと思わされますが、この販売数ペースが本当に継続するのか、個人的には疑問です。第4四半期にTeslaの決算がどうなるか、引き続き注目です。

www.cnbc.com